ニュージーランドでトレッキング

ニュージーランドで「トランピング」と呼ばれるトレッキング。本格的な登山はもちろん、初心者が気軽に歩けるコースも多く、あらゆるレベルの人が楽しめます。のんびりと、自分のペースで手つかずの大自然を歩いてみましょう。そこには、息をのむような絶景が広がっています。

世界中から人が訪れる、トレッキング天国

ダイナミックで美しい景色が望めるニュージーランドは、世界中のトレッキング愛好家が憧れるパラダイス。国内には無数のルートが存在しており、自分の体力やレベルに応じて歩くコースを選べます。たとえば、よく整備された遊歩道は「ショート・ウォーク」、一般的なトレッキングコースは「トラック」、踏み跡を探しながら歩かなくてはならない上級者向けの道は「ルート」など、細かく分類されており、環境保護の観点から、人気の高い9つのトラックは「グレートウォーク」に定められ、異なる管理態勢が敷かれています。

ニュージーランドのトレッキングシーズンは11月から4月頃ですが、通年歩けるコースもたくさんあります。また、蛇や熊といった危険な動物がいないので、リラックスして歩けるのも魅力です。特に日没が遅くなる1月や2月は、場所にもよりますが、夜の8時くらいまで明るいので、時間を有効に使えます。道中でじっくり写真を撮ったり、スケッチをしたりしても大丈夫。ぜひ自分のペースで歩いてください。

ただしニュージーランドの山小屋は、グレートウォーク以外は管理人が常駐しておらず、食堂や売店、自動販売機などもないため、食料と調理器具、食器などを自分で持ち込む必要があります。天候によりトラックが閉鎖されているケースもありますので、事前に各町のDOC(環境保護省)のオフィスに立ち寄り、情報を集めるようにしましょう。

国をあげて自然保護にとりくむニュージーランド

国土面積の30%以上が国立公園や自然保護区に指定されているニュージーランド。トレッキングコースも自然保護省(DOC)によって管理され、山小屋や標識の設置、トラックの整備など、トレッカーのための配慮が充分になされています。ニュージーランドでは、国をあげて自然保護が行われています。例えば国立公園内でトレッキングツアーを行う場合は、ツアーを行う会社が専用のライセンスを取得していなくてはなりませんし、集客人数に応じて、ツアーの収益から定められた金額をDOCに払う制度が導入されています。こうして集められたお金は、国立公園の整備や生態系の調査、保護活動などに使われています。このようなシステムは、時に煩わしく感じられることもありますが、人々が自然の中に入ることで繊細な生態系を壊さないための配慮であり、今ある美しい風景を次世代に残すための工夫とも言えるでしょう。

数あるトレッキングコースの中でも、人気が高く、環境保護が必要とされる9コースは、「グレートウォーク」という特別なカテゴリーとし、他のトレッキングコースとは異なる予約制度、料金制度を設けています。「グレートウォーク」の中でも、特に人気が高いのが「ミルフォード・トラック」と「ルートバーン・トラック」で、こちらは入山者数を制限するため予約制度が設けられています。予約を取るのに苦労することもありますが、予約がとれさえすれば、ベストシーズンに訪れても混雑とは無縁。ゆったりと自然本来の姿を堪能できることも魅力です。

北島、南島、それぞれの世界遺産エリアを歩いて堪能

ニュージーランド本土には、2ヵ所の世界遺産エリアがあります。(ニュージーランドの本土から離れた島嶼部、亜南極諸島も世界遺産に登録されています)

北島のトンガリロ国立公園は、マオリの聖地であることや、聖地を乱開発から守るために国に寄進された歴史などから、世界自然文化遺産に登録されています。こちらには日帰りでマウント・ナウルホエのそばの景勝地を歩く「トンガリロ・アルパイン・クロッシング」コースや、3~4日の日程で歩くグレートウォークの「トンガリロ・ノーザン・サーキット」、4~6日かけてマウントルアペフを一周する「ラウンド・ザ・マウンテン・トラック」などがあります。

トンガリロ国立公園の魅力は、なんといっても活火山がうみだす独特の景観でしょう。不気味なクレーターや鉱物の影響でエメラルドグリーンに染まった湖や、火山の泥流が固まった跡など非日常の風景にあふれています。

南島の世界遺産である「テ・ワヒポウナム」は南島南西部に位置する4つの国立公園(アオラキ・マウントクック国立公園、フィヨルドランド国立公園、ウエストランド・タイ・ポウティニ国立公園、マウント・アスパイアリング国立公園)の総称です。

これらの国立公園は南島を南北に貫くサザンアルプスの山々と、山から地表へと移動する数々の氷河によって形成された景観が特徴で、氷河や氷河湖、氷河谷など、日本では見られない景色を楽しめるエリアです。そのため「テ・ワヒポウナム」のエリア内には、遊歩道からトラック、上級者向けのルートまで、あらゆるコースが縦横無尽に伸びています。宿泊を伴うコースとしては、グレートウォークに指定されている「ミルフォード・トラック」、「ルートバーン・トラック」、「ケプラー・トラック」のほか、氷河谷に広がる草原を歩く「グリーンストーン・トラック」や「ケープルズ・トラック」、ホリフォード川に沿って西海岸に向かって歩く「ホリフォード・トラック」などがあります。それぞれのコースの一部分を歩けば、デイウォークとしても楽しめますし、アオラキ・マウントクック国立公園などでは、短いハイキングコースも充実しているので、コースの選択肢は無限といえるでしょう。ウエストランド・タイ・ポウティニ国立公園では、氷河ハイクも楽しめます。

ビーチに湖、川や島、氷河など、様々な水辺を歩く

「地球の箱庭」とも称されるニュージーランドでは、亜熱帯の森林からフィヨルドまでバラエティに富んだ自然景観が見られます。例えば、ウエストランド・タイ・ポウティニ国立公園のフォックス氷河、フランツジョセフ氷河では、世界でも珍しい氷河ハイキングが楽しめます。ガイドとともに、地上から氷河を登っていくツアーもありますし、ヘリコプターで氷河の上に降り立ち、そこからハイキングを楽しむ、ヘリハイクも行われています。ニュージーランドならではのハイキング体験を楽しみましょう。

また、南島北部の「アベル・タスマン・トラック」は、海沿いの丘とビーチを交互に歩くコースで、干潮時のみ渡れるビーチなどがあるため、シーカヤックや水上タクシーで一部ルートをスキップすることもできます。透明度の高い海とオレンジ色に輝くビーチのコントラストを楽しみましょう。運がよければオットセイと出会えることもあり、開放的で楽しみの多いコースです。

同様に南島北部のピクトンから出発する「クイーンシャーロット・トラック」は、マールボロー・サウンズの海を見ながら、リアス式海岸の岬を歩くコースです。こちらもボートで荷物を運んでくれますので、気楽に歩きたい人におすすめです。

南島の南に浮かぶスチュワート島のラキウラ国立公園内のグレートウォーク、「ラキウラ・トラック」もビーチと山を歩きます。こちらのビーチではペンギンと出会えることもありますし、道中には様々な野鳥の観察も楽しめます。うっそうとした森を歩きながら、島特有のゆったりした時間を満喫しましょう。さらにスチュワート島には、悪路が長距離続き、10日前後の日数を要することで知られる「ノース・ウエスト・サーキット」もありますが、世界中のトレッカーが、このハードな道に挑戦しています。

さらに北島のテ・ウレウェラ国立公園のグレートウォーク 「レイク・ワイカレモアナ・トラック」は、ワイカレモアナ湖の湖畔を歩くコースですし、北島の南西部のグレートウォーク、「ワンガヌイ・ジャーニー」は、ワンガヌイ川のカヤックとウォーキングを組み合わせたコースです。コース上にはマオリの集会場としても利用されている山小屋がありますので、自然と歴史、文化を両方感じられることでしょう。さらに北島のコロマンデル半島やファーノースなどでは、巨木カウリの森を歩くコースなども人気ですし、映画「ラスト・サムライ」で日本の富士山として撮影されたマウント・エグモントを要するエグモント国立公園では、4~5日をかけて山を一周する「アラウンド・ザ・マウンテン・サーキット」なども楽しめます。

気軽に参加できるデイウォークがたくさん!

長い距離を歩けるかどうか自信がない、重い荷物を背負って歩けないかもしれない。そんな不安がある人には、デイウォークがおすすめです。

ニュージーランド各地には、日帰りのハイキングコースがたくさんあります。個人で出かけることもできますが、送迎やランチ付きのガイドツアーに参加すれば、目的地までの交通機関やランチを手配する必要もありませんし、各地域の歴史やニュージーランド原生の鳥や植物、樹木などについての知識も得られます。特に、自然と共生してきたマオリの人々が、様々な植物を衣食住に活用していた話などはとても興味深いもの。ぜひ、ガイドツアーに参加して、ニュージーランドへの理解を深めてください。

日帰りの大人気コースといえば、アオラキ・マウントクック国立公園のフッカーバレーです。国内最高峰のマウントクックを眺めながら氷河谷の中を歩くコースで、2つの氷河を間近に見られることでも人気を集めています。氷塊が浮かぶフッカー川の河原でマウントクックを眺めながらランチをいただけば、きっとニュージーランド・ハイキングの醍醐味を味わえることでしょう。

山岳風景を満喫したい人には、アーサーズパス国立公園もおすすめです。「アバランチ・ピーク」コースなど所要6~8時間程度のハイキングから、小さな子供連れでも楽しめるショート・ウォークまで、コースの充実ぶりが魅力です。ショート・ウォークは、短いものは10分、長いもので3時間程度というバラエティの豊かさですので、家族連れにも人気です。クライストチャーチからアーサーズパス国立公園まで観光列車のトランツ・アルパインを使えば、さらに楽しい旅行になることでしょう。

また、ワナカから、マウント・アスパイアリング国立公園のロブロイ氷河をめざすハイキングも、人気の高いコースです。こちらは氷河谷から山に入り、山の斜面にはりつくロブロイ氷河を見学します。青い氷を間近に見られますし、森の中ではケアやファンテールなど、かわいらしい野鳥たちとたくさん出会えます。もう少し、登る時間を短縮したければ、マウント・アスパイアリング国立公園の手前にある、ダイヤモンドレイクスを目指すコースもおすすめです。
さらに、クイーンズタウンからマウント・アスパイアリング国立公園に入り、グレートウォークの「ルートバーン・トラック」を一部歩くデイウォークや、逆方向のテ・アナウから「ルートバーン・トラック」の一部であるキーサミットを目指すデイウォークもあります。

もちろん北島でも、ウエストオークランドやコロマンデル半島、ロトルア、タウポ、トンガリロ国立公園など、各地でデイウォークのツアーが行われています。

バラエティに富んだ9コースを歩こう!

ニュージーランドに数あるトレッキングコースの中でも、人気が高く、環境保護対策が必要とされる9コースは、「グレートウォーク」というカテゴリーに指定されています。これらのコースは、他のトレッキングコースとは異なる管理態勢が敷かれており、コースごと、また歩く時期によって、提供されるサービスや山小屋の料金が細かく決められています。

例えば、グレートウォークの中でも、特に人気が高い「ミルフォード・トラック」と「ルートバーン・トラック」に関しては、入山者数を制限するため予約が必須となっています。最もルールが厳しい「ミルフォード・トラック」の場合は、登山者全員が同じ行程で歩くことが定められており、キャンプは禁止、歩く日数や利用する山小屋も決まっています。そのため、不自由な点はありますが、登山者の数をおさえているため、ベストシーズンに訪れても混雑とは無縁。ゆったりと自然本来の姿にふれることができるのです。

グレートウォークの多くでは、ガイドツアーも行われています。個人で歩く料金と比較すると、料金は数倍にはねあがりますが、ガイドツアー専用のラグジュアリーな山小屋には、シャワーや乾燥室も設けられていますし、食事もワイン付きのコース料理をいただけるなど、至れりつくせりです。「アベル・タスマン・トラック」では、ボートで次の山小屋までバックパックなどの重い荷物を運んでくれたり、ボートやシーカヤックを使って、歩く距離を短くしたりもできますので、体力に自信がない人や、様々な体験がしたい人にはおすすめです。

また、「トンガリロ・ノーザン・サーキット」では、活火山によって形成された様々な地形を楽しむことができますし、「ワンガヌイ・ジャーニー」ではワンガヌイ川をカヤックで下り、漕ぐのに疲れたら流域を歩くという、ユニークな体験ができます。

そのほかにも、ワイカレモアナ湖のそばを歩く「レイク・ワイカレモアナ・トラック」、テ・アナウ湖とマナポウリ湖の眺めを山上から眺められる「ケプラー・トラック」、巨大なシダが生い茂るトロピカルな海岸線を歩く「ヒーフィー・トラック」、野鳥の宝庫、スチュワート島の魅力を満喫できる「ラキウラ・トラック」などがあります。

グレートウォークの9コースには、それぞれに異なる魅力が詰まっていますので、ぜひ歩き比べてみてください。

Hooker valley, Mount Cook, New Zealand © 7Michae; Kepler Track, Fiordland, New Zealand © TNZ; Tongariro, New Zealand © Fyletto; Kayaking at Abel Tasman image courtesy of Nelson Regional Development Agency; Waipoua Forest, Northland, New Zealand © James Heremaia; Lake Waikaremoana Track image courtesy of Malcolm O'Neill; Tongariro Northern Circuit image courtesy of the Department of Conservation; Whanganui Journey image courtesy of Justin Rihia; Abel Tasman Coast Track image courtesy of the Department of Conservation; Heaphy Track image courtesy of the Department of Conservation; Kepler Track image courtesy of Daniel Deans; Milford Track image courtesy of Graeme Murray; Routeburn Track image courtesy of Will Patino; Rakiura Track image courtesy of the Department of Conservation